
実運送体制管理簿とは
実運送体制管理簿は、2025年4月から施行される改正貨物自動車運送事業法に基づき、元請け事業者に作成が義務付けられる管理簿です。この管理簿は、物流業界における「多重下請け構造」の透明化を目的としており、実際に荷物を運ぶ運送事業者(実運送事業者)の情報を記録するものです。
目的と背景
多重下請け構造の是正
物流業界では、元請け事業者から下請け、さらに孫請けへと仕事が委託される「多重下請け構造」が一般的です。この構造により、実際に荷物を運ぶドライバーの待遇が悪化し、適正な運賃が支払われない問題が発生しています。
ドライバー不足と待遇改善
物流業界では慢性的なドライバー不足が課題となっています。2024年4月からの時間外労働規制(いわゆる「物流の2024年問題」)も加わり、輸送力不足が懸念されています。この制度は、ドライバーの所得改善や待遇向上を目指す取り組みの一環です。
取引の透明化
実運送体制管理簿の導入により、運送取引の「見える化」が進み、適正な取引や効率的な物流体制の構築が期待されています。
記載内容
実運送体制管理簿には、実運送事業者の名称や許可番号などの会社情報、貨物情報(荷物の内容や運送区間)、何次下請けまで委託されているかといった下請け関係などを記載する必要があります。
対象と義務者
作成義務者
荷主と直接契約を結ぶ元請け事業者が作成義務を負います。また、運送取扱事業者(利用運送事業者)も対象となる可能性があります。
対象となる運送
1.5トン以上の貨物運送が対象とされ、小口配送などは除外されます。
形式と運用
記録形式
記録形式は特に定められていないため、既存の配車表を活用したり、電子データで作成することも可能です。必要な情報が正確に記録されていれば問題ありません。
運用開始時期
この制度は2025年4月から施行されるため、それまでに管理簿の作成方法や運用体制を整備する必要があります。
期待される効果
ドライバー待遇の改善
運賃の流れが明確化することで、適正な賃金支払いが促進され、ドライバーの待遇が改善されることが期待されています。
中間マージンの削減
多重下請け構造が可視化されることで、不要な中間マージンが減少し、物流の効率化が進むと考えられます。
持続可能な物流体制の構築
公平な取引環境が整備されることで、物流業界全体の健全化に寄与し、持続的な物流体制を実現する一助となります。
まとめ
実運送体制管理簿は、物流業界の透明性向上とドライバー待遇改善を目的とした重要な制度です。元請け事業者は、2025年4月の施行までに必要な準備を進めることで、適正な運賃や効率的な物流体制の確立に寄与することが期待されます。