
物流業界では2024年に向けて多くの会社が試運転開始済み
“物流業界における2024年問題”
のタイムリミットは、目前に迫って来ました。さすがに業界内の多くの会社は、すでに動き始めているようです。 もしかするとトラックドライバーに対しての説明では、「2024年問題」などの表現を使っていないかも知れません。それでも、「月平均の時間外労働を80時間以内にしてくれ」などと言われたことはないでしょうか。実はこれが、2024年に向けての準備なのです。今回は、物流業界の2024年問題の具体的内容を詳しく説明します。物流業界の2024年問題 詳細
会社側が「80時間以内」を言い始めたのは、物流業界に限ればトラックドライバーなど自動車運転業務を担う人たちに対して、労働基準法第140条により規制がかかるようになるからです。 規制がかかり始めるのは、2024年4月1日以降。それにより物流業界の受ける影響の大きさが、非常に大きいと予想されていることから、“物流業界における2024年問題”と言われているのです。

改善基準告示
2024年3月31日までこの状況が続くということは、「それまで労働時間は青天井」というわけでもありません。トラックドライバーの拘束時間などに対しては、改善基準告示が役所から出されます。ただ、労働基準法のように、法的強制力がはたらくことはありません。改善基準告示に違反しても、労働基準監督署からの是正指導が行われるのみ。確信犯的に是正指導を無視する物流業者も、少なくないのが実情でした。 それでも、この状況を放置しておけば、トラックドライバーたちの健康を損ねる状況の改善も放置されることになります。そのため年を追うごとに、改善基準告示が厳しくされてきました。違反点数が累積することで、運送業の許可が取り消されることも現在ではありえます。 24年3月31日までは現行の改善基準告示順守しながら、翌日からはそれに加えて960時間以内/年の順守もできるように、物流企業は今から備えておくべきでしょう。
2024年問題に物流企業が敏感になるのは
2024年4月1日からはドライバーの時間外労働時間合計が960時間/年を超えてしまうと、会社側は“6か月以下の懲役、または、30万円以下の罰金”という罰則を科される可能性が生じます(労働基準法119条)。 会社側が「80時間以内にしてくれ」と言うようになったのは、この法的強制力によるところが大きいのです。 しかし、年間の時間外労働時間数合計が960時間以内であれば問題ないのです。「80時間」はあくまでも、ひと月あたりの平均(960時間÷12か月=80時間)であり、目安にしか過ぎません。法定休日の労働時間を含めない時間外労働が100時間になってしまった月があったとしても、それ以外の月で80時間を下回り、1年合計で960時間以内に調整すれば法律上は問題ありません。 ただ、ひと月の出勤日数が20日の場合、時間外労働80時間/月は労働行政上、過労死ラインと考えられています。法律上は問題なくても、自社トラックドライバーの健康を考えるのなら、80時間/月を超えないように会社側はするのが望ましいでしょう。

ドライバーには特例が、それ以外には一般則が適用
なお、ドライバー以外の事務職・技能職・整備職・倉庫内作業職・運行管理者などは、同じ物流企業に勤めていたとしても、ドライバーと同じ特例の“960時間以内/年”が適用されないことについては注意が必要です。事務職員たちには、ほとんどの一般企業従業員に適用される一般則が適用されます。 以下、その一般則を箇条書きにしました。24年4月1日以降もこれらすべてが、ドライバーには適用されることはありません。(1)法定休日の労働を含めない時間外労働は、合計720時間/年以下 (2) 〃 含めた時間外労働は、合計100時間未満/月 (3) 〃 含めない45時間超/月の時間外労働ができる月は、6回以下/年 (4) 〃 含めた時間外労働時間の2か月平均値・3か月平均値・4か月平均値・5か月平均値・6か月平均値は、すべて80時間以内